塩ビ管・継手の基礎知識

塩ビ管・継手は、建築や土木工事をはじめ、私たちの生活に欠かせないインフラに幅広く使われています。
しかし、「種類が多すぎて、どれを選べば良いかわからない」「それぞれの特徴や用途の違いがよくわからない」といった悩みを持つ設計担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、塩ビ管・継手の基本的な知識から、種類や選び方、注意点までをわかりやすく解説します。
目次
塩ビ管とは
塩ビ管とは、正式名称を「硬質ポリ塩化ビニル管」といい、その名の通りポリ塩化ビニルというプラスチックを主原料として作られています。
軽量で加工しやすく、建物の給排水設備や下水管、農業用水路など、さまざまな場所で活躍しています。
鉄管のように錆びることがなく、耐久性にも優れているため、メンテナンスの手間が少ない点も大きなメリットです。
1、塩ビ管の特徴
塩ビ管は、その優れた特性から幅広い用途で利用されています。
まず、錆びることがないため、水回りの配管に最適です。
また、酸やアルカリといった薬品に強く、腐食しにくい性質を持っています。
これは、土壌中に埋設する下水管や工場内の薬品配管などでも安心して使える理由です。
さらに、軽量で切断や接着などの加工が容易なため、施工時間を大幅に短縮できます。
現場での作業効率が向上し、工事全体のコスト削減にもつながります。
一方で、熱に弱く、高温環境下での使用には適さないという注意点もあります。
塩ビ管継手とは
塩ビ管継手とは、正式名称を「硬質ポリ塩化ビニル管継手」といい、塩ビ管同士を接続したり、異なる方向へ配管を分岐させたりするために使用される部品のことです。
塩ビ管継手もまた、塩ビ管と同じ硬質ポリ塩化ビニルを主原料としています。
塩ビ管継手がないと、配管のシステムを構築することはできません。
塩ビ管継手の特徴
さまざまな形状の継手があるため、T字に分岐させたり、角度を変えたり、配管のサイズを変更したりと、設計の自由度が高いのが特徴です。
また、塩ビ管継手では主に、接着剤を使って管と継手を接合します(接着接合)。
接着剤で接合するため、一度取り付けると分解や再利用が難しくなりますが、その分、強固で安定した接続が可能です。
塩ビ管・継手の種類
塩ビ管には、大きく分けてVP管とVU管があります。 もともとはVP管だけでしたが、VP管より薄くても使用可能な用途向けの管材としてVU管が規格制定されました。
VP管
VP管は一般的に圧力用「上農水道埋設用・建築給水用」に使用されます。
排水用途としてはVUより撓みにくい特性を活かし浅埋設、深埋設に使用することもあります。集合住宅の排水・通気配管にも使用します。
使用温度範囲 |
常温(5~35℃) |
設計圧力(静水圧+水撃圧) |
1.0MPa |
VU管
VU管は、主に排水用途に使用されます。
埋設では自然流下用途「下水用・土木用・排水用」に使用されます。
低層住宅の排水系統にも使用されています。
使用温度範囲 |
常温(5~60℃) |
設計圧力 |
無圧 |
HIVP管
HIVP管は塩ビ管の耐衝撃性を向上させております。
主に水道用途「水道用・建築給水用」に使用され、低温時(外気温)でも優れた耐衝撃性を維持し、寒冷地や他管工事での衝撃による被害を最小限に抑えます。
使用温度範囲 |
常温(5~35℃) |
使用圧力(静水圧) |
0.75MPa |
HT管
HT管は耐熱性を向上させた塩ビ管で、高温流体用「給湯用・高温排水用」管材です。
従来の金属管とは異なり、錆びや腐食による水質悪化や電食、漏電事故などの心配がありません。
給湯用 呼び径50以下
使用温度(℃) |
5~40 |
41~60 |
61~70 |
71~90 |
最高使用圧力(MPa) |
1.0 |
0.6 |
0.4 |
0.2 |
給湯用 呼び径65以上
使用温度(℃) |
5~40 |
41~60 |
61~70 |
71~85 |
最高使用圧力(MPa) |
1.0 |
0.4 |
0.25 |
0.15 |
高温排水用
使用温度範囲 |
常温(5~90℃) |
使用圧力 |
無圧 |
塩ビ製接着継手の種類(上農水・建築給排水)
継手の種類は、圧力用に使用される「TS継手・HITS継手」と無圧用(排水用)に使用される「DV継手・VUDV継手」があります。
また、高温用には「HT継手(給湯用)・HTDV継手(給湯排水用)」を使用します。
給水用途
圧力用には、接着代が長いTS受口を採用した継手を使用してください。
排水用途
排水用途には、接着代が短いDV受口のご使用が一般的です。
DV継手はVP管に、VUDV継手はVU管の肉厚に合わせた仕様となっております。
耐熱用途
耐熱の給水用途にはHT継手を、排水用途にはHTDV継手をご使用ください。尚、HTDV継手は厨房排水には使用できませんのでご注意ください。
まとめ
塩ビ管・継手は、私たちの生活を支える重要な素材です。
VP管、VU管、HIVP管、HT管といった種類があり、それぞれ特徴と適した用途が異なります。
設計担当者の方は、使用する場所や流す液体の種類、温度などを考慮し、最適な製品を選ぶことが重要です。