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集合住宅
2016/07/07

大規模マンションの排水管更新工事施工性向上 「カンペイ君」

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劣化した亜鉛メッキ鋼管で漏水

長年、住み慣れたマンションも築30年が経過すると、いろんな所に不具合が出てくる。排水管の経年劣化もその一つだ。とくに、漏水が発生すると下階の住人にも迷惑がかかり、住人間のトラブルになりかねない。

そんな漏水問題を解決するため、マンション全戸で大規模な排水管の更新工事を行っている大阪府枚方市の「グリーンタウン香里ヶ丘」を取材した。同マンションは、昭和58年の竣工から30年以上が経過した鉄骨鉄筋コンクリートマンション。4棟に分かれ、377戸を誇る大規模マンションである。

同マンションでは、数年前より、横枝管に使用されている亜鉛メッキ鋼管(通称白ガス管)が劣化し、ピンホールから水漏れが発生しており、マンションの管理組合で改修に向けた協議が行われてきた。2年前、株式会社MTK1級建築士事務所が設計会社に決定し、管路の調査や更新方法検討が行われた。当初、横枝管のみの更新を予定していたが、鋳鉄製排水立て管にも経年劣化が見られたため、排水立て管も合わせて更新することになった。

グリーンタウン香里ヶ丘(C棟、D棟)全景

施行性向上のため採用された「カンペイ君」

排水管の更新工事で重要になるのは、排水性能の改善、施行時間の短縮、低コストである。住人が生活をしながらの工事となるため、できるだけ工事時間を短縮して住人の負担を軽減しなければならない。同時に、工事費は住人負担となるため改修コストを抑える必要もある。

その施工性とコストの両方を満足する製品として採用されたのが、クボタケミックスの延焼防止機能付集合管「カンペイ君」である。通常、防火区画貫通部から1m以内は、不燃材による配管が建築基準法及び消防法で定められており、塩ビ管を集合管に直接、接続することはできない。そのため、塩ビ管の外側に耐火被覆層を持った、耐火二層管などで配管されることが多い。「カンペイ君」の採用により、その延焼防止機能を活用し、防火区画貫通部1m以内でも安価で、施工性に優れた塩ビ管を使用することが可能になった。

改修工事を監督する株式会社長谷工スマイルコミュニティ、設備管理部の三谷司郎さんは、「耐火二層管を加工する場合、電動カッターなどが必要で、一般の住居では作業できません。しかし、塩ビ管の施行であれば、生活されている部屋でも簡単に加工ができます。」と塩ビ管の使い勝手の良さを語る。

また、勾配確保の点から塩ビ管のメリットを語るのは、同社の西川和弘さん。「古い物件の多くは、横枝管の勾配がほとんど考慮されていません。元々、鋼管で横引きしていたところに被覆層がある耐火二層管を使用すると、ますます勾配がとりにくくなります。塩ビ管を使用できれば、肉厚が薄い分だけ勾配がとりやすくなります。」

横枝管は塩ビ管にでき施行がスピーディー

一戸に要する工期は4~5日で、標準4日の場合、1日目に床や壁の開口工事、2日目に排水管の更新工事、3~4日目で床や壁の復旧工事を行う。住人が水を使用できないのは、管路を入れ替える2日目の朝9時から夕方の5時までの間だけ。工事はまさに時間との勝負である。

排水管の更新工事は、既設管の撤去から始まった。最下層階のトイレ裏側にある横枝管、排水立て管をパイプカッターで切断して撤去すると、延焼防止機能付集合管「カンペイ君」を設置。排水立て管には遮音性が期待できることから耐火二層管を使用し、滑材を塗って「カンペイ君」に接合した。掃除口を挟んでさらに排水立て管を延ばし、上階から「カンペイ君」を下ろし、最後に金物のボルトを締め、排水立て管に固定し、「カンペイ君」の貫通部にモルタルを充填して排水立て管部分が完成した。

「カンペイ君」の採用で防火区画貫通部から1m以内に塩ビ管が使用できるため、キッチン用、バス・洗面用、トイレ用の3系統の塩ビ管を「カンペイ君」に接続することが可能になった。これら共用部の工事に加えて洗面下など各専有部の排水管の更新も、塩ビ管を使用して行われた。こうして一階づつ一連の工事が終了した時点で通水試験が行われ、問題がないことが確認された。

国土交通省によると築30年を超えるマンションは、現在129万戸から平成35年には264万戸に倍増するという。今回のような更新時期を迎えるマンションがますます増えることを考えると、「カンペイ君」のような施工性を向上させる管材の重要性がさらに増すものと予想される。

施工の手順

施工の手順