米子空港下を流れる農業用水の漏水を防止するダンビー工法
弓ヶ浜半島の農業用水路「米川」
鳥取県の美保湾と中海を分ける弓ヶ浜半島は、その昔、美保湾に浮かぶ小島であった。その後、日野川から流れ出した砂が堆積し、半島を形成したと考えられる。この半島には川が無く、農民は安定した農業を営むため、かんがい用水を渇望してきた。そして江戸時代中期に建設が行われ、日野川から境水道までの約20kmにおよぶ水路は「米川」と命名された。米川によって潤された半島では、米や野菜の栽培が盛んになり、とくに白ネギは弓ヶ浜半島の名産となっている。
米子空港
滑走路下の暗渠で漏水が発生
現在、米川の水はその流域の約2000haの農地に水を供給している。米川の農業用水があっても慢性的な水不足に悩まされており、少しの水もムダにできない。ところが、ある箇所で漏水が指摘されてきた。米川唯一の暗渠部分、米子空港の滑走路下である。この暗渠は、昭和25年に米軍によってφ900mmの管路が3本布設され、昭和33年に鳥取県が4本の管路を追加。そして旧防衛庁によって昭和55年に全巻きの補強が行われた。(ちなみに米子空港は、航空自衛隊と共有空港。)鳥取県西部総合事務所農林局、大山・弓浜農業用水対策室の谷川祐章さんは、「布設後すでに50年以上経過しており、ヒューム管の老朽化が見られる。とくにつなぎ目部分でクラックが多く、漏水の原因になっている」と管路の状態について語った。工事は開削で全面的なやりかえが望ましいが、滑走路は閉鎖できないため非開削更生工法で行われることになった。
工事概要図
297mをワンスパンで工事が可能なダンビー工法
工法選定の条件として、同対策室の森木理典さんは、「元々、直線だった水路は空港建設の際、曲げられた経緯があり、水理的に不利になる断面縮小は最低限にとどめたい。さらに滑走路の途中に立坑を作ることは不可能なので、297mの長い距離をワンスパンで工事できる管更生工事(製管工法)とした」と語った。これに対して、工事を受注した株本・吾妻JVは、各工法の長所・短所を検討。最終的には施行性の良さを重要視し、ダンビー工法の採用を決めた。
ダンビー工法の工程
7本の管路を順に更生
工事は、3月より9月までほぼ一月1本のペースで行われた。3月は非かんがい期で水が無かったが4月からはかんがい期のため、工事を行う管路だけ水を止め行われた。空港としての機能を維持するために、工事は22時から翌朝6時には必ず終了しなければならない。「七本もあるかんろを随時更生していかないといけないことと、管路更生の後、ボックスカルバートの工事があるので予定通りに工事を終わらせないといけない。その意味で、ダンビー工法の施行性の良さは重要であった」と語るのは、工事を監督する株本・吾妻JVの向根善雄さん。