大型ショッピングセンターでの雨水流出抑制事例
複雑な構造をした雨水貯留槽でも維持管理性を発揮するRAIN望スタジアム
増加する集中豪雨とそれに伴う浸水被害は、今年も各地に大きな被害をもたらせた。そんな中、各地でソフト、ハード両面で対策が行われ、とくに大きな期待とともに設置が進んでいるのが雨水貯留槽。短時間に降った雨水をいったん、ブロック内に貯めることで、激しい降雨時の下水管をへの急激な雨水の流入を防ごうとするものだ。本誌の前号では、RAIN望スタジアムを使った道路での浸水対策をレポートしたが、今回は大型ショッピングセンターの駐車場下に埋設されるということで埼玉県、春日部市に向かった。
国道16号線と国道4号線の結節点となる春日部市柳に建設中のケーティーインセンスモール(仮称)は、埼玉県内最大級の大型商業施設。敷地は「2核1モール」の本格的な商業施設を配したセンターブロックと大型の直産センターや専門店が計画される西ブロックに分かれる。開発を手掛ける株式会社ケーティーインセンスモールは、施設オープン時全体の雇用を約3千人とし、税収の増加など地域経済の発展と共にまち全体の発展に寄与することを期待する。
施行現場となる土地は都市計画上、市街化調整区域であり、周辺のインフラ整備が整っていないため、さまざまなインフラ工事が必要であった。中でも浸水対策は、これまで幾度となく水路の氾濫や冠水などに悩まされてきた地域だけに非常に重要であり、その対策として雨水貯留槽の設置が義務付けられた。
センターブロックには、3箇所の樹脂製雨水貯留槽の設置が計画された。駐車場下には8.5千㎥の容量を誇る雨水貯留槽、また立体駐車場の下には1.5千㎥の雨水貯留槽、その他に1千㎥の雨水貯留槽である。これらタイプの異なる3種類の雨水貯留槽に適した製品が検討された。
雨水貯留槽の採用を決めた株式会社フジタ、外構所長中村仁之さんは、「数社の製品を検討しましたが、施工条件を考慮した上で、維持管理性能、施工性、強度、空隙率」、そしてコスト面などを総合評価し、クボタケミックスのRAIN望スタジアムに決めました」と語った。中でも立体駐車場下の雨水貯留槽では、構造物下にあるため、施行後の点検や清掃などの維持管理性能が要求された。この点で、RAIN望スタジアムは貫通部から目視による点検ができ、必要に応じてバキュームで清掃が可能であるということが評価された。また、大容量の雨水貯留槽で重要視されたのが、施工性と強度。施工性に関しては、「初めて同製品を使用するため多少の試行錯誤があったものの、施工作業は予定通り進んだ。」一方、強度に関しては、「RAIN望スタジアムの場合、ブロックをかみ合わせて組んでいるので、横方向にも強度的な信頼感がある」とまずまずの評価を得た。
すでに8.5千㎥と1千㎥の雨水貯留槽の施工は終了しており、12月より立体駐車場下の1.5千㎥の雨水貯留槽の施工が始まる。「先行の2種類の工事から得た情報を活かして構造的に施工の難しい3つの雨水貯留槽を仕上げたい」と抱負を語った。
奇しくも8月末の大雨の影響で春日部市では、43棟が床上浸水と千二百棟以上で床下浸水が発生し、地域の浸水対策の重要性が改めて認識された。クボタケミックスの雨水貯留槽RAIN望スタジアムがこのような大雨から県内最大級の大型ショッピングセンターの安全と地域の安全を守っていく。
完成予想図
施工概略図
貫通部
自走式のカメラで確認ができ、バキュームでの清掃が可能。
トラックでの積載状態
パレットレスで搬送するため、梱包材等の産業廃棄物を出さない。