断層のズレに対応した水道配水用ポリエチレンパイプ
クボタケミックスの水道配水用ポリエチレンパイプが断層のずれに対応!
断層横断箇所で管路の挙動を確認
ポリエチレンパイプは、水道ビジョンや水道事業ガイドラインで耐震管に認定され、クボタケミックス水道配水用ポリエチレンパイプも全国の水道管耐震化計画で広く採用されている。
その耐震管として重要な特性が地震発生時、可とう性を生かし地盤の変状に柔軟に追従することである。一昨年、震度5強の地震が発生した長野県白馬村の断層横断箇所で、クボタケミックス水道配水用ポリエチレンパイプの挙動が初めて確認され、高い耐震性能を実証した。
最大震度5強の長野県神城断層地震
平成26年11月22日、午前10時ごろに長野県北部を震源地とするマグニチュード6.7の地震が発生した。この地震で長野県白馬村では最大震度5強を記録し、村内を縦断する神城断層で最大1mの隆起と数10㎝の横ずれが生じた。長野県では、地震調査委員会の評価において、今回の地震が「神城断層の一部の活動による可能性が高い」とされたことから、地震の呼称を「長野県神城断層地震」を統一した。
白馬村の被害は、主に神城断層の近辺と隆起した東側の堀之内地区で多く発生した。村内の地震被害は、重傷者4名、全壊37戸、半壊22戸のほか、水道管路の被害は23箇所で、最大で約200戸が断水した。
塩島地区ので計測された約80㎝の隆起
白馬村での管種別被害状況
管種 | 布設延長(m) | 被害件数(件) | 被害率(件/km) | |
鋳鉄管 | CIP | 195 | 0 | 0 |
ダクタイル鋳鉄管 | DCIP | 54,302 | 7※ | 0.129 |
塩ビ管 | VP | 95,721 | 7 | 0.073 |
鋼管 | SP | 15,087 | 8 | 0.530 |
ポリエチレン管 | PE・PP | 36,182 | 1 | 0.028 |
石綿管 | ACP | 48 | 0 | 0 |
日本地震工学会 2014年長野北部の地震に関する調査団報告より
(2015年5月 2014年長野北部の地震に関する調査団)
※全て一般継手の被害であり、耐震継手のダクタイル鋳鉄管には被害なし。
約80㎝隆起、30㎝の横ずれに追従
白馬村塩島地区に埋設された下水道用の鉄筋コンクリート管が被害を受け、復旧工事が行われることになった。これに先立って配水用ポリエチレンパイプシステム協会は、平成25年5月8~9日の両日、下水道管路の直上に埋設されたクボタケミックスの水道配水用ポリエチレンパイプ(φ75、平成10年度に埋設)の調査を行った。
地震により、地表面が約80㎝隆起し、約30㎝の横ずれに対して、水道配水用ポリエチレンパイプは、約3mの間にひずみが発生し、垂直方向に約70㎝変位して地盤変状に追従したことが確認された。
断層通過部付近の変形状況
パイプ変位量の測定結果(垂直方向)
発生歪みは6%以内と推定
配水用ポリエチレンパイプシステム協会は、過去に約50cmの段差沈下実験を行い最大3%の歪みを確認しており、今回の地震ではそれ以上の歪みが発生したと考えられる。地震動に対する耐震計算における許容の歪みは、日本水道協会の「水道配水用ポリエチレン管・継手に関する調査報告書」に掲載されている繰り替えし伸縮実験の結果などから3%に設定されているが、地盤変状に対する許容歪みは、同報告書の引張試験や圧縮試験などの結果から6%に設定している。今回の地震で発生した歪みは、その許容歪みの6%以内と推定される。
堀上げたパイプは各種の性能試験をクリア
堀上げたクボタケミックス水道配水用ポリエチレンパイプは、回収してさまざまな性能試験を行った。S字部変形量は堀上げ時175㎜であったが、15日後には35㎜まで減少した。圧縮方向の応力が解放されたことが、材料の弾性が十分保持されていると考えられる。また、堀上げ直後の外径寸法の測定結果から通水に影響を及ぼすような断面変形は生じられないことも確認した。
さらに、管路の強度の変化を確認するため、耐圧性、破壊水圧強さ、引張り降伏強さ、引張り破断伸び、熱間内圧クリーブ性の各試験を行った。その結果、いずれの性能試験も規格をクリアしており、布設ご17年が経過し、大きな断層変位を受けても、その高い管材性能を維持するクボタケミックス水道配水用ポリエチレンパイプの実力を改めて確認することができた。
外径寸法測定のようす
引張り試験の状況
堀上げ後(供用中)の外径法測定結果
断層通過部からの距離(cm) | 外 径 | だ円度 | JWWA だ円度規格 | |
上下 | 左右 | |||
+230 | 91.15 | 91.70 | 0.55 | 1.8 |
+130 | 91.80 | 91.65 | 0.15 | |
+30 | 91.85 | 91.60 | 0.25 | |
0 | 91.55 | 91.90 | 0.35 | |
-70 | 91.55 | 91.65 | 0.10 | |
-170 | 91.20 | 92.45 | 1.25 |
堀上げたパイプの性能確認結果
試験項目 | 性能規定 | 試験結果 | |||||||||
耐圧性 | 2.5MPa×2分間で漏れ、 破損があってはならない。 | NO.1 | 漏れ、破損なし | ||||||||
NO.2 | 漏れ、破損なし | ||||||||||
破壊水圧強さ | 破壊水圧4.0MPa以上 | NO.1 | 5.0MPa | ||||||||
NO.2 | 5.0MPa | ||||||||||
引張り降伏強さ | 引張り降伏強さ2.0MPa以上 | 上 | 23.2 | 下 | 23.1 | 左 | 23.3 | 右 | 22.8 | 平均 | 23.1 |
引張り破断伸び | 引張り破断伸び350%以上 | 700 | 744 | 722 | 722 | 722 | |||||
熱間内圧クリーブ性 | 80℃、1.08MPa×165時間で、漏れ、破損があってはならない。 | NO.1 | 1.08MPa×179時間で、 漏れ、破損なし |
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NO.2 | |||||||||||
80℃、1.00MPa×1,000時間で、漏れ、破損があってはならない。 | NO.1 | (1.08MPa×179時間経過後) 1.00MPa×1,000時間で 漏れ、破損なし。試験継続中。 |
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NO.2 |